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== H2(ハル子とヒロ) ==

H2(ハル子とヒロ) (47)ヒロの決意

ろま中男3 作品リスト
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H2(ハル子とヒロ) (47)ヒロの決意

「ごめんね…」
放出後の満足感を味わってシットリした柔らかい女体に覆い被さり、荒い吐息に背中を上下させていたヒロは悲しそうなつぶやきに顔を上げた。

「わたし…、ヘンでしょ…、でも、どうしようもなくて…」
顔を横に向けて壁を見つめる目尻から涙がこぼれていた。さっきまでの猛々しさを無くした息子が押し出されるようにするりと抜けた。

「…、そんなことない、ハル子はヘンじゃないっ」
ハル子の言う通りだった。思わず張り手をしてしまってからのハル子はまるで別人だった。でもそれは変態夫に仕込まれたせいで、ハル子の責任じゃないと思ったヒロは強く否定した。

「ちがうの、ヒロ…、私の中に、誰かがいるの…」
ゆっくりと顔の向きを直したハルがヒロを見つめてつぶやく。一瞬目が合ったハル子は目を伏せて目尻から涙をこぼした。
「?…、どういうこと?…」
意味がわからないヒロは素になって聞き返す。

「殴られたりすると…、突然誰かが、私のカラダを支配して…、私は、私のカラダが、イヤらしいコトをされて、悦んでいるのを…、まるで、他人のコトみたいに、見てる…」
言いよどみながら訥々と語るハル子は、オレをうかがうようにその都度不安そうな目線を向けていた。

「それって…」
今にも泣き出しそうな顔でハル子がオレを見ている。二重人格という言葉が頭に浮かんだが口には出せなかった。

二重人格はドラマかなにかで見知った中途半端な知識で、正式には解離性同一性障害(Dissociative Identity Disorder :DID)と呼ばれる精神障害の症状らしい。

耐えられないような過酷な現実に遭うと人間は心の中に別人格を作り上げる。別人格への入れ替わりをすることで、つらい現実を他人格に押しつけて精神の崩壊を避けようとする。

ハル子の場合は変態夫の暴力的な性行為に耐えきれなくて、別人格が出来てしまったと考えられる。ただこれはあとで調べてわかったことで、ハル子の告白を聞いたその時点でヒロは半信半疑だった。

「ハル子はヘンじゃない、アイツがみんな悪いんだ」
専門的なコトはよくわからなかったがそれだけは自信を持って言えた。同時にハル子をこんな悲しい顔をさせる変態医師に対する怒りがカラダ中でふくれあがって、ヒロはハル子をきつく抱きしめていた。

「でも、こんなオンナ…、気持ち悪いでしょ」
脱力した体をヒロに預けたハル子は涙をこぼして、悲しそうな笑みを浮かべる。

「そんなことあるか、ハル子はハル子だっ、オレの大好きなハル子だっ」
ハル子の言葉に心のどこかで感じていたことを指摘されたようで、そんな思いを振り払うかのようにギュッと抱きしめ、耳元で叫んでいた。

「…、ありがと…、私もヒロが大好き…」
背骨が折れそうなほどのハグにのけぞったハル子は、鼓膜に響く愛の告白に応えてヒロの背中を優しく抱きしめた。

「アイツを殺す」
背中に当てられた手の温かさに少し安心したヒロだったが、ハル子をこんな風にした変態医師に対する押さえきれない憤怒にかられて叫んでいた。

「だめっ、そんなコトしたら、ヒロの人生が、メチャクチャになっちゃうっ」
チビヒロが出来たときに堕ろす代わりに死ぬコトも考えたハル子は、その延長線として変態医師の殺害さえ考えた。

しかしそんなことをしたら不幸になるだけだと考え直したハル子は、ヒロにその時の想いを強い口調で訴えた。

「あ、ああ…」
涙ながらに訴えるハル子の強弁に気圧されたヒロは、なんとなくハル子の気持ちが伝わってきてなんとか怒りを抑えることができた。

「でも、アイツにはいなくなってもらう」
確かに殺人はリスクが高すぎる。完全犯罪なんて小説やドラマの中の作り事で、現実には間違いなく警察に逮捕されるだろう。

でもあの男がまたハル子を陵辱するなんてとてもガマン出来ない。冷静さを取り戻したヒロは、不安げに見つめるハル子をよそに何かいい方法がないか思いを廻らせていた。

H2(ハル子とヒロ) (48) につづく
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