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== 英語教師英梨 ==

英語教師英梨 (9)撃退

ろま中男3 作品リスト
英語教師英梨 目次

英語教師英梨 (9)撃退

「いえ、この子が」
後先考えずに痴漢男に注意して不安な気持ちもあった英梨は、声をかけてきた中年男性を心強い味方だと感じた。

英梨の声に応えるように洋子の伏せていた顔がゆっくりと上を向いた。その目には涙が溜まっていた。それは若い女体を襲う快感に耐えきれずに潤んだ目だったのだが、オジサンは少女の顔を見てかわいそうな小鳥を想像した。

「アンタ、いい年してやめなさいよ」
洋子の特殊な事情などとうてい理解できそうにない人の良さそうなオジサンは、純粋な善意で少女に同情して後ろに立つ男をにらみつけた。男はそっぽを向いて聞こえないふりをしている。

「アンタに言ってるんだよ」
蓮っ葉な態度に気分を害したオジサンは、男に向かってさらに語気を強めて言う。

なんだ痴漢か、どうした、…。
声を荒げるオジサンにまわりがざわつき始めた。少女も了解済みのプレイを楽しんでいたつもりの尾崎は恨めしそうな顔で英梨をにらんだ。

「おまえ、次で降りろ」
にらみつけてくる尾崎の視線に英梨は恐怖を感じたが、それを牽制するようにオジサンは男の手をつかんでいた。

運転手は後ろの騒ぎに気付かないのか、普通にバスを走らせていた。そして次のバス停の案内を流し、人影のまばらなバス停で止まった。

乗降口のドアが同時に開いたとたんに、男はオジサンの手を振り払って脱兎のごとく逃げ去った。痴漢実行犯を逃がしてしまったが、騒ぎが大事にならずに英梨はホッとした。しかし明日からも同じバスに乗ることになるとしたらチョットやっかいだと、自分の軽はずみな行動を少し後悔した。

逃げた痴漢を追いかける人もなく、乗客の昇降が終わるとバスはなにもなかったように走り出した。

「しょうがないか」
痴漢男を見送ったオジサンは、英梨に苦笑い浮かべていた。
「ありがとうございました」
英梨は笑顔で礼を言った。

たぶん英梨ほどの子供がいそうな年に見えるが、この若い美人の笑顔があまりに魅力的だったので、オジサンは赤くなって照れることひとしきりだった。自分の美貌をあまり意識していない英梨には、オジサンが何で赤くなっているかよく分からなかった。

「ありがとうございました」
少女の方を向くとまだ目に涙をためているが、精一杯の笑顔を浮かべてと英梨に礼を言った。その切ない笑顔がまた英梨に少女をいとおしく感じさせた。

「助けてくれて、ありがとうございました」
少女はちょこんと頭を下げてオジサンにも礼を言った。
「いや、いいんだよ、ははっ」
先ほどから真っ赤になっているオジサンは、チョットしどろもどろな感じで応えた。

「あなた、大丈夫?」
はかなげな感じのする少女が心配で思わず出たそのセリフがなんか先生っぽいなと、英梨は内心チョット照れていた。
「大丈夫です」
少女もだいぶ落ち着いたらしい。涙を拭いながらまたさっきの笑顔を向けてくる。

なんて、かわいらしい…。
英梨は美少女の輝くような笑顔に心の中でつぶやくとしばらく見つめていた。英梨は一人っ子だったので、こんなかわいい妹がいたら、と以前から思っていた。

現実には半ば納得済みでこの美少女が痴漢プレイを楽しんでいたという事情は、ネンネで純な英梨には全く想像の外だった。

「勇気があるんですね」
プレイを途中で中断されてモヤモヤする女体のうずきを感じていた洋子だったが、英梨のような美人にじっと見つめられてチョット照れていた。目を伏せて恥ずかしげにしながら、消え入りそうな声でつぶやいた。

「そんなことないのよ…、ただ、あなたが、あんまりかわいそうだったから…」
洋子の内面にひそむ女の部分に全く気付かない英梨は、可憐な少女にいとおしさを感じてやさしく応える。

「ホントに、ありがとうございました」
混んだ車内で英梨の豊かな胸に寄りかかる少女は頬を紅潮させてはにかむように笑った。その笑顔で英梨は心の無防備な部分をくすぐられたような気がして、チョット照れたように笑っていた。

英語教師英梨 (10) につづく
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